闇色のシンデレラ
『へい、剛っす』



迷うことなく電話をかけると、わずか3コールで応答した剛さん。



「あの、壱華です」

『……壱華さん?どうしたんすか』



電話でも迫力ありの渋い声以外は、物音や人の声は聞こえない。


つまり辺りは静かだから、今のところ忙しくはないと予測。



「今、どちらにいらっしゃいますか」

『本家っす』

「本家、そうですか……」



でも、本家にいるのか。


だったら抜け出してマンションに来てもらうってのは難しいかも。


そう、わたしは志勇の命令に従わずどこかに憂さ晴らしするつもりでいる。



『へい、何かご用で?』

「あ、大した用事じゃないので。お忙しいのにすみません」

『いえ、ヒマなんすけど。
俺にできることがあるなら言ってもらえると助かります』



そっか、それならお言葉に甘えようかな。


よし、気分転換しよう。


あの場所に、あの人に会いに行こう。





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