闇色のシンデレラ
SIDE 志勇





壱華の声がした。




湿った暑さのため、わずかに開けた車の窓から確かに捉えた音。


壱華の悲鳴が耳をつんざく。




何かあったのか。何が起こったのか。


そう考える時間さえ無駄だ。



「兄貴!?」



俺はドアに手を引っかけ、生ぬるい外気へ体を晒した。


本家に隣接する駐車場に車を停めている最中であったが、俺の体がその暇を待っていられるわけがなかった。



駆け出した俺の足は裏口の敷居をまたぎ、本家内部へ入り込んだ。




庭を突っ切り、見据える先にあったのは、玄関の奥にできた10人ほどの人の群れ。


中心には、黒と赤。


2人の男に囲まれる、錯乱状態の壱華がいた。
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