闇色のシンデレラ
「どけっ」



ぬかった。


玄関に並ぶ野次馬を押しのけ、己をひどく悔恨した。



「若?」

「志勇……?いけません、お待ちください!」



驚く組員や、俺を制止させようとする司水に目もくれず、めがけるは暴れる壱華をなだめようとする、愚かな男ども。



「壱華、頼む。話だけでも聞いてくれ!」



耳を塞いで声にならない叫びを上げる壱華の腕を押さえ、必死に話しかける黒髪。


クソ、触るな。壱華が汚れる。



「邪魔だ!」



いてもたてもいられず土足のまま上がり、手前にいた赤髪の襟首を掴んでそのままの勢いで壁へ叩きつけた。


奴は打ち所が悪かったか、ズルズルと座り込みそれっきり動かなくなった。



「……!」


それを見てひるんだ黒髪の男。


すかさず間に割り入り、できるだけ壱華を刺激しないよう肩に手を置いた。



「嫌ぁっ!やめて!」

「壱華、俺だ」

「やだ、やだ!痛い!」



しかし、フラッシュバックの影響で声が届かず、俺の手を払い除けようとする。


逃がすものかと手を掴まえ、その細い体を間近に引き寄せた。



「壱華」

「放してぇ!」

「壱華っ!」



その瞬間、壱華の動きが止まった。
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