闇色のシンデレラ
徐々に後ずさりするガキども。


その場に集まった連中もうろたえる中、ひとり前へ出た男の姿があった。



「兄貴」



颯馬は俺が睨んでいる相手の前へ歩み、真剣な面持ちで語りかける。



「こんな奴らに構わなくていい。時間の無駄だ」



言われて視線を下に傾けると、俺の胸の中で静かに息をする壱華。


確かに壱華を運ぶことが優先だ。


そうして奴らから背を向けて歩き出すと、正面に見えてきた2人の人間。




「志勇!」



おふくろと、剛。


おふくろは壱華を見るとたちまち表情を変え、近くまで寄ると意を決したように俺へこう告げた。



「離れのあなたの部屋に運びましょう、あそこなら安全よ」

「ああ……」




言われた通りついていくと、後ろには黒帝のものであろう視線を感じる。


だが、俺はあえて振り返ることなどしなかった。


これは決別だ。


壱華はもそちら側へは戻らない、という永遠の決別。


壱華は一生、俺の傍に在り続けるべき女だ。
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