闇色のシンデレラ
SIDE 理叶



わずかに抱いていた希望が、絶望に変わった。



「理叶様。申し訳こざいませんが、若頭の命令です。ただちにお引き取りください。
先にお見えになっていたお父様と、オヤジにはわたしから伝えておきます。また日を改めてご挨拶するようにと」



思考回路だけが冷静になった頭に反響する男の声。


やむなく屋敷を引き返す俺の脚。


暗黒の雲の下、はるか遠くで咆哮する雷。


無言で乗り込んだ組の車の中。




『せめて罪滅ぼしをしたいから、その子に会いたいだなんて、甘ったれたこと考えるんじゃないよ』



発進した車。いつの日かの姉貴の言葉。


これは、あの日か。罪の無い女を、壱華を傷つけたと知り、激怒した姉貴が俺を殴り飛ばしたときの台詞か。


全くもって、その通りじゃねえか。



俺は壱華に何を与えた。

恐怖だけだ。


やっと見つけたと思ったあいつの居場所を奪い、黒帝は何をした。

最悪な形での裏切りだ。



失望するべきは己。


しょせん、女はそんなもの。壱華も裏がある人間だと、高をくくって判断を誤った俺の失態だ。



よりによって壱華を疑うとは。


壱華の妹と名乗る女、相川実莉には何か腹に一物を抱えていることは薄々察してしたのに。


ただ、それだけでは奴が白か黒かは分からなかった。


あの女は俺と目を合わせるどころか、顔を合わせることも避けていたからだ。
< 199 / 409 >

この作品をシェア

pagetop