闇色のシンデレラ
SIDE 光冴



壁に叩きつけられた背中が鈍く痛む。


車が揺れて振動する度、壱華の悲鳴と重なって痛む。


やっぱり、痛みってものはいつだって辛く悲しい。





物心ついたときから、俺の体はアザまみれだった。


父親は俺を愛してなんてくれなかった。


顔も知らない母親の死と引き換えに生まれ落ちた子どもを恨み、酒に溺れては毎日俺は殴られた。


服を着れば見えないところを、毎日、毎日。


あんまり傷を作ると児童相談所に目をつけられるから、背中や腹に集中して、毎晩必ず。



思い返せば、あのときはよく生きていたと感心するが、あれが普通だと思っていたのだから暴力も日常化すると恐ろしい。


むしろ他の奴らも服の下にはアザがあるものだと思っていた。



けれど小学校に上がったとき、ある少年がそれを間違いだと教えてくれた。


俺の傷だらけの体を見て、もう無理しなくていい、お前の居場所を作ってやると、そう言ってくれた恩人と出会った。


それが理叶だった。




潮崎に救われた俺は、それを期に人生が大きく変わった。


しかし、いつまでたっても人を殴ることは大嫌いで、一向に武術を学ぼうとはしなかった。


ましてや自分が人を傷つける側になるなんて、加害者になるなんて思いもしなかった。
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