闇色のシンデレラ
でもそのうち、親という脅威から遠去かり、嫌だった格闘技も護身術にも慣れ親しんでいった。


それから理叶と同じ中学に入って、黒帝に誘われて、黒帝のメンバーが多い高校に入学した。


去年から理叶は総長に、俺は副総長に抜擢(ばってき)され、充実した日々を送っていたある日。




壱華ちゃんに出会った。



潮崎組の組員で、荒瀬組組長の側近、鳴海司水の弟、航介(こうすけ)さんがオーナーをしているバーに働きに来ていた彼女。


天使のような美女がいるなんて噂されて、それ目当てに来る客もいた。


実際客足も上々。航介さんも壱華を可愛がっていた。



そんな矢先、俺が壱華を裏切った。


顔を殴打し、腹を蹴り、首を絞め上げた。


3回、暴力を振るった。事実上壱華に手を上げたのはそれだけだ。


……それだけ?


精神的苦痛が、身体に及ぼす痛みが、受けた人間にどんだけダメージを与えるのか俺が一番分かってるってのに、それだけじゃねえだろ。


俺はあの最低な父親と同じことをしたんだ。俺はあいつと同類だ。



俺は自身の心に激しく反発し、潮崎の若頭に襲名すると決めた理叶の側近候補として名乗りを上げた。


その結果がこれだ。笑い者にもならない。




なあ、壱華ちゃん。


こんな俺でも、もしも次があるのなら、どうか俺を罵ってくれよ。


そうでもしないと、君に対する気持ちは止まりそうにない。



君が好きだ。



こう伝えることができたら、死んでもいい。それが本望だ。
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