闇色のシンデレラ
しばらくベッドに組み敷かれた状態で抱き合っていた。


しかしふとした瞬間、志勇が何かを感じ取ったようにわたしを抱き起こして、すっぽり腕の中に収めた。


すると、扉の開いた小さな音と共に、いい匂いが漂ってきた。


なぜか懐かしいような、味噌汁の匂いだった。





「……あら、ごめんなさい。お邪魔しちゃったかしら」




……この声、お母さん?


驚いて顔を覗かせると見えたのは、手にお盆を持って入り口に佇むお母さん。



「だけど志勇、ここはあなたの部屋だけど、わたし達家族がいるからね。ちょっと我慢してほしいな」



志勇の部屋?じゃあここは本家の一部ってこと?



「まあね、久々の自分の部屋だから、リラックスしちゃう気持ちは分かるけど」



お母さんが入ってきても何もしゃべらない志勇は決まりの悪い顔をしている。


志勇さん、いけないことしてるって自覚があったのね。


お母さんが入ってきてくれたからいいものの、あのままの流れで行けばその先はきっと───


思い出して、お母さんの前で不覚にも顔が熱くなってしまう。


恥ずかしくなって志勇の胸で顔をうずめた。
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