闇色のシンデレラ
「はい、どうぞ」



するとお母さんの声とおいしそうなにおいが近づいてきた。


そういえば喧嘩してから、お昼も抜いちゃってけ。


窓の外は暗いし、時刻は夜を迎えているみたいだし。


でも、わたしにどうぞって、どういうこと?



「お腹空いたでしょ。剛に聞けばお昼も食べてないって言うじゃない?
食欲がないなら無理しないでいいけど、少しでもお腹に入れられる余裕があるなら食べて」



そういってお母さんはおぼんに乗せたお味噌汁とおかゆを見せた。



「……わたしに、ですか?」

「ええ、どうぞ。あなたのために作ったの」

「……すみません、ありがとうございます」

「いいのよ、それにこれは颯馬から言われたことだし。『あの子に母さんの味噌汁食べさせてあげて』って」

「颯馬さんに?……ありがとうございます」



なんで颯馬さんが提案したのかは分からないけど。



「じゃあ、ごゆっくり」とお母さんは食膳をベッドのそばのテーブルに置いて部屋から出ていってしまった。
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