闇色のシンデレラ
SIDE 壱華



揺らさず慎重に、かつ素早く。


おぼんに乗せたお茶セットを静かに運ぶ。


確か中庭はこの角を左に曲がったところ。


さあ、いよいよ初仕事だと自分を奮い立たせて歩いていると。



「早いな……」



男性の深刻そうな声音が聞こえ、わたしは立ち止まった。


この声に聞き覚えがあったから。








湊人(みなと)が亡くなって5年か」




「ええ、そうですね」



深みのある落ち着き払った低い声と、聞き取りやすい澄んだ声。


左側の壁に沿って一歩踏み出せば、割と近くに人の姿がふたつ。


思った通り、組長さんと司水さんだ。
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