闇色のシンデレラ
「この時期になると思い出す。加えて今日は、あいつの月命日だ」

「はい、その通りです。もうひと月経てば5年を迎えます」

「そうか」




先へ進みたいけれど、そのためには彼らの前を通らなくてはならないので躊躇してしまう。


仕方なくまごまごしていると、組長さんの固く結ばれた口から紡がれた名前。





「湊人は随一の男だった」



湊人。


彼は中庭につながる丸窓から漏れる光を浴び、呟いた。


その横顔には組長らしからぬ哀しみが浮かび、弱々しくさえ感じた。



「友であり、兄弟であり、俺が心を許した理解者だった」

「わたしたちの前でも、いい兄であり、また尊敬すべき側近の鏡でした」



同じ位置に立つ司水さんは、その一方で懐かしげに微笑んで見せる。


すると、それを目の当たりにした荒瀬の長は、弾かれたように首を回した。




「司水」

「はい」






「お前は俺を恨んでいるのか」
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