闇色のシンデレラ
2人の間に暗い陰が差す。


そのとき、グラスの中に積み重ねた氷が、カランと鳴って崩れた。


組長さんの目がこちらへと向けられ、訝しげな顔をした彼の視線に、司水さんが首をひねる。



「壱華様……?」



その整った顔の表面に現れたのは困惑。


しまった、きっと聞いてはいけないことだったんだ。




急いで足を進め、深く会釈をして彼らの前を過ぎる。


わたしは本来の目的のため歩くのみ。


知らなくていいことは知らないままでいい。


そう自分に言い聞かせて。
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