闇色のシンデレラ
「確かにヤクザは悪い奴らだ。暴力が仕事。犯罪が職業。
厳しい(おきて)があって、破った者にはたとえ血縁者だろうと容赦しない。
それでもわたしは、この組織を排除すべき悪だとは思わない」



見合わせた少し茶色がかった瞳の奥に光る彼女の信念。



「壱華は、知ってる?」



首を傾ける涼は静かな笑みを携え、続けてこう告げた。




「反社会的集団である暴力団が人を救う側に回ること」




暴力団が、人を救う?


無知なわたしはその言葉にひどく驚いた。





「例えば、阪神淡路大震災のとき、東日本大震災のとき。
一番最初に復興の支援をしたのは誰だと思う?

公園での炊き出しや、帰宅困難者のために事務所の解放。
福島の原発事故では、防護服も着用せず支援物質を無償で届けたことも、事実として残っている」






そんなこと知らなかった。


暴力団が災害の救済措置を施していたなんて。



「それを誰よりも早く遂行したのは、政府でも民間の企業でもない。動いたのは……」




ヤクザならきっと、その背景に金儲けが絡んでいることだろう。


それでも、人々を救出しようとしたことが事実なら。





「暴力団や右翼団体に関わる、ヤクザと呼ばれる人間よ」






そんな彼らはこの世の中で嫌われていながらも、必要悪と呼ばれる存在として君臨していなければいけないのかもしれない。
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