闇色のシンデレラ
「……まあ、実は復興支援の裏には※シノギが隠れてるんだけど。
でもどんな理由であれ、社会の『負け犬』であるはずのヤクザが、人を救ったことに変わりはない」



己の存在が明かな黒だとしても、人としての在り方を忘れないその道の人。


彼らの生き方を言葉に例えるなら。



「義理と人情、だね」

「……あはは、そんな一生懸命聞いてくれなくてもいいのに。
でも荒瀬組は『任侠』を大事にしてるからね。カッコイイ男たちだよ」



彼女の笑顔はとても優しいものだった。


数々の困難を乗り越えてきたであろう人はいつもそう。誰よりも優しいんだ。


いつかわたしも、この人たちみたいに強くなれるのかな。



「さて、そろそろ10分経ったくらいかな」

「え?……あ、そうだ。
10分以内に厨房に戻らないと。
ありがとう涼。いってきます!」

「いーえ、頑張ってね。また会いに来るから」



たちまち思い出して走り去るわたしに、爽やかな笑顔で見送る涼。













「……あたし、だめだなあ。
この世界そんな綺麗事ばっかりじゃないのに。

ごめん。あたしには荷が重たいみたいだよ、理叶」











進み始めたわたしの背中に、涼の密かな謝罪は虚しくも届かず。










※シノギ……ヤクザの収入、または収入を得るための手段のこと
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