闇色のシンデレラ
不意に、突き刺さるような視線がわたしの動きを止めた。



周辺を見回すと、閑静な住宅街の路地裏から、人影がひとつ。


その影を見た瞬間、わたしの本能が真っ先に危険だと察知した。



「ううぅ……」



見知らぬ若い男が、気味悪くうなりこちらに歩み寄ってくる。


痩せこけた頬に、落ちくぼんだ眼孔(がんこう)


それは目の奥に真っ赤な狂気を、両手には黒い凶器を握りしめ、正体を露わにする。









「あ゛ああぁぁ!」









辺りに渡る、北の使者の奇声。


それはついに魔王が侵略を開始した合図であった。
< 246 / 409 >

この作品をシェア

pagetop