闇色のシンデレラ
嫌だ。まだ死にたくない。


志勇から離れたくない。


死別だけは、絶対に避けなくてはいけないんだ。


もう永遠に会えないなんて考えられない。



「……志勇……っ!」



助けて。その一心でわたしは叫んだ。


不規則になりつつある呼吸の合間に、流血する腕の痛みに我を忘れる前に、最も大切な人の名を、志勇の名を呼んだ。





「志勇……やだ。わたし、まだ死にたく、ない。
志勇と、離れたくないよ……」

「当たり前だ、誰がお前を死なせるか!」




吐き出したわたしの弱々しい言葉に、声を荒げる志勇は、次の瞬間思い切り傷口を押さえた。



「っ……痛い!」

「止血するだけだ。落ち着け」



激しい痛みを覚え、振り払おうとすると、志勇は空いている手でわたしの血まみれの手を掴んだ。


ふと傷口を見たら布で押さえられている。



「足りねえ……。司水、あるだけよこせ!」

「手持ちはこれで限界です。ひとまず運びましょう」



強く圧迫され結ばれた白い布。


止血もむなしく、すぐにじわりと染みだし、まっさらな布を赤く変色させる血。


出血によるショックで意識がかすみかけたそのとき、わたしの体が上へと持ち上げられた。
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