闇色のシンデレラ
SIDE 志勇



病院のベッドに寝かせてから、どれほどの時間が過ぎたのか。


日が沈み、日が昇り、また沈んで月が天高く上がった今現在。



真夜中の病院。


特別棟の完全個室の病室に眠る壱華。


先ほどより顔色がよく、心なしか、その口元はうっすらと笑みを浮かべているかに見える。




この頃、俺の前で感情を表に出すようになった壱華。


初めて笑ったときなど、あれは一生忘れはしないだろう。


あの雨の日、俺だけに涙を見せた壱華が、狂おしいほど愛しく感じた。



日に日に増していく想い。


最早自分でも狂気的だともいえる愛情。それでもなお止まない壱華への愛着。



だが、受け止めきれないほどの想いの塊を、壱華は一途に受け止めるのだ。


むしろもっと欲しいと愛を乞い、激しく熱く、互いが互いの存在に溺れていくように。



だから、なのだろう。


警戒が薄れていた。


こんなに早いとは思わなかった。


こんなにも早く───連中が壱華の命を狙い出すとは、思ってもみなかった。



『最上級の餌』を、北は捨てるつもりなのだ。


それともこれがあいつらなりの宣戦布告なのか、どちらにしろ壱華の命が狙われ続けることに代わりはない。




……壱華がいない世など、死んでいるも同じだ。




その声が頭の中で反響した瞬間、それまで感じていなかった恐怖が腹の底から湧き上がる。


たまらず壱華の右手を強く握ったそのとき、病室のドアの向こうから気配を感じた。
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