闇色のシンデレラ
「はい。捕らえた男は神木(かみき)会・会長の息子で、狙撃の大会などで数々の優勝経験がある、拳銃の扱いに慣れている人物です。
どうやら彼は壱華様を殺害するために鉄砲玉にされたとのこと」



すると、一歩前に出た司水が仕入れた情報を伝えてきた。



「神木会?随分前に廃れた組じゃねえか」

「ええ、おそらくは上に切り捨てられて、捨て駒に使われたものかと」

「だろうな、そうとしか考えられない。
奴らのやることは※『任侠(にんきょう)』の風上にも置けねえからな」

「ああ……。しかし、これで目処(めど)がついたね」




俺の発言に頷いた颯馬はそう言った。




「神木は急成長する巨大な組織の三下。
『親』の命令もなしに、あんなに分かりやすい派手な陽動、働くはずがない」

「いや、初めから分かっている。
ここまで非道を極めるモラルのない組織はどこを探してもあそこだけだ」



それをさえぎるような俺の声。


生ぬるい廊下に漂う不穏な空気。



「北、ですね。ついに動き始めましたか……」

「……ああ」



やけに落ち着いた様子の司水。


『北』とキーワードを口にすると、後ろにいた剛はぐっと拳を握りって沸き上がる感情に耐えている。


皆、奴らに傷つけられた。


壱華も湊人と剛の親父が無くなった日と同日に狙われるという、不吉が連続して、心のどこかで奴らを恐れていた。


だから今まであえて口に出さなかった、北を束ねる最大の極道。




人は奴らをこう呼ぶ。


残虐極まりない型破りな極道。


宮城を中心に東北、北海道、さらには近畿まで範囲を広げつつある日本三大暴力団のひとつ。












極山会(ごくざんかい)だ」














そこには龍と呼ばれる魔王がいる。











※任侠…… 義を重んじ、困っている人や苦しんでいる人を助けるために命を惜しまないこと。男気。
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