闇色のシンデレラ
幼い頃から何度も繰り返してきた夢には、わたしに何か隠されたことがあるという気がして仕方なかったから。




「ねえ、じゃああの人は?」

「あの人?」

「わたしを撃った人。あの人はどうなったの?」

「……お前を狙撃した男か。あいつなら、もういない」

「いない?」

「この世には存在していない。
元より捨て駒として送られてきた人間だ。慈悲をかけるまでもない」

「そう……」



今回の出来事で、より一層その予感が深まった。


わたしを狙撃した男の最期の表情の意味。今なら分かる。


あれは、わたしを襲うことによって自分は解放された、という安楽の表情だ。


これで自分の役目は終わった。これで死ねる。そんな思いが彼の顔に表れていた。


なぜ、わたしなのか。


ひとりの男の人生を狂わせるほどのわたしの利用価値とはいったい何だろう。



「ねえ、志勇」

「なんだ」



疑問が頭を巡った。


と同時に大きな感情が沸き上がり、わたしの精神を支配した。




「もうおしまいにしよう」

「……何をだ」

「わたしをそばに置くことは、あなたにとって良くないことだと思うの」




それは恐怖だった。
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