闇色のシンデレラ
「あなたのその執着心は、いつかあなた自身を破滅に導く。
わたしを傍に置き続けることはそれを意味する。
わたしがあなたを壊してしまう」



志勇がわたしに執着すればするほど、どんな理由であっても、わたしを離さないでいるほどに、つながりは強固なものになる。


だけどわたしたちは対になってはいけない。


この先で何か必ず起こる。


わたしがという人間が在る限り、志勇の身に、いや、荒瀬組に良くないことが起きてしまう。


これは予感じゃない。確信だった。


例えば今回のことだって、撃たれたとはいえ死ぬような大怪我じゃなかった。


撃たれたショックで気が動転しただけだ。


わたしにとっては重大な事件だって、この極道の世界からして見ればチンケなものだろう。



しかし志勇はこんな小娘の怪我ひとつで、一睡もできなくなった。


それは志勇が確実に執着しているという証拠。


だけど今ならまだ間に合う。


これ以上関係を深めればもう引き下がれないから、今なら離別しても深い傷は残らない。


そうでしょう、志勇。


わたしより暗い闇を歩いてきたあなたなら、女ひとりを捨てるくらい、簡単なことでしょう?





こうしてシンデレラは弱音を吐いて帝王を試す。


捨てられることを願って、本心では愛されることを望んでいる。


何度、こんなやり取りをしただろうか。


矛盾だらけのわたし。それでも受け入れてくれた志勇。


だけど今回ばかりはどう出るのか。


捨てるなら捨てればいい。利用したいなら命令してくれればいい。


いい方向には考えていない。




どちらにしろ、これが最後の足掻きだった。
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