闇色のシンデレラ
「極山会を実質的に仕切っているのは、5年前荒瀬組に奇襲をかけることを命令した人間です」



極山の名称ひとつで過敏に反応したわたしに相反し、司水さんの声は落ち着いていた。


だけど膝の上に置かれた手は強く握られていて、まるで感情を抑えているかに見えた。



「奴はその計画が成功を収めたことにより、幹部の端くれから若頭に一気に昇格しました。
現在はその地位を利用して、極山を仕切っています」



極山の若頭、またの名を北の龍、魔王。


日本のトップに君臨する3人の王のうち、彼はそう呼ばれている。


その魔王の話を聞いた帝王は、ソファーに深く腰をかけ背もたれによりかかって足を組んだ。


志勇はイラついているみたいだった。



「名を山城総司(やまぎ そうし)。本来なら5年前に荒瀬の報復を受けるはずの人間でしたが、それは叶いませんでした。
なぜなら……」



興味のないことは一切聞く耳を持たない志勇が怒りを(あら)わにしているなんて。


それほど、山城という男は注意すべき人物なのか。


そんな人間に命を狙われているのだと思うとゾッとした。
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