闇色のシンデレラ
その影はゆらりと動いたかと思うと、わたしを壁際に追い詰めた。


そして、ダンッとわざと大きな音を立てて壁に手をついた。



「……っ」



暗がりで怖かった。殴られるのではないかと体を硬くした。


けれど、ふわりと香るタバコのにおいが、志勇のものだということに気がついた。



「……志勇?」

「どこ行ってた、俺に隠れてこそこそ何やってんだ」

「え?」



だけど冷たい態度はいつもの彼と違っていて。


そもそも、今日は仕事が夜まであるって聞いてたのに、もう帰ってきたの?



「おい、なんとか言えよ。……あ?なんだそれ」



志勇はわたしの手の中にある紙袋を発見して視線を向ける。


さっと隠すと志勇は驚いたように目を見開く。


一瞬落胆したように見えた、その瞳は瞬く間に怒りに染まっていった。



「こっち来い」



ぐっと強い力で私の腕を掴んでリビングに向かう志勇。


痛かったけど、わたしは別に悪いことしてないし志勇を想っての行動だしと思って素直についていった。
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