闇色のシンデレラ
志勇はソファーにドスッと座ると足を組んで問いただしてきた。


わたしは怒っている志勇の顔から目が離せず、その前に突っ立っていた。



「壱華、俺を隠し事が通るとでも思ってたのか?
ここ一週間、俺に内緒で繁華街に出歩きやがって。
誰に会いに行ってた?素直に言えば許してやる」

「ねえ、勘違いしてない?」

「あ?何がだ」



淡々と質問をしてくる志勇が怖い。


なんでそんなに怒ってるの?


あまりの迫力にこっちは何も悪くないのに泣きそうだ。


だけど泣くのはずるいことだ。絶対に泣くもんか。



「わたしが志勇のこと裏切るわけがないでしょ。
そんなにわたしのこと信用できないの?」

「そういうことを言ってんじゃねえんだよ。
繁華街に出歩いて何してたって聞いてんだ」

「……」

「ほら言えねえじゃねえか、やましいことでもあるんだろ、なあ」

「痛いって、やめてよ!」



掴んでいた手をさらに強く握ってきたものだから、持っていたプレゼントを志勇に投げつけてしまった。


志勇は反射的にそれを掴んで無傷だったけど、わたしがそんな態度をとったことに驚いて瞳が左右に揺れていた。


こんなことをしてしまったのは生理前でイライラしているのも要因だったかもしれない。


だけど一方的に言われ続けてわたしは感情が爆発してしまった。




「それ志勇のなの!志勇の誕生日プレゼントに買ったの!」



志勇がつかんだ小さな紙袋を指さして声を荒らげる。



「サプライズで明日渡したかったのに台無し……」



冷静に考えれば普通に説明すればいいだけなのに、何やってんだろうわたし。


不甲斐なさに泣きそうになって志勇から顔を背けた。
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