闇色のシンデレラ
腹部を撃たれたらしい剛はひどく出血している。


弾が飛んできたであろう場所を見ると、自動小銃を手にした男が数十メートル先から歩み寄ってきていた。



「颯馬」

「あ!?」



俺は剛の止血をしている颯馬に話しかけた。



「助手席の下にある収納を開けろ」

「は?剛の止血が先だ」

「この程度で剛が死ぬか。いいから早くしろ」

「何だよこんな時に……え」



そこは拳銃(チャカ)の隠し場所だった。


俺はそれを受け取り、一か八かその男を狙撃しようとした。


ところがだ。




次の瞬間、再び銃声が2度鳴り響く。


フロントガラスに血が散った。


しかしそれは、剛のものでも、颯馬でも、俺でもない。


射撃されたのは、仲間と見られた、バイクに乗る男。


笑いながら進行妨害を続けていた男2人が、バイクから転げ落ち、それきり動かなかった。




……視界の右側で銃撃を続けるこの男、何をしている。誰が目的なんだ。


奴は薬でもやっているのか、仲間であろう人間を撃ってもへらへらと笑い続けたままだった。


こいつは何者だ。見たところ顔に見覚えはない。


単なる私怨か、北の使者か、それとも西がついに動き出したのか。


なんにせよ、この状況を切り抜けねばとチャカを握り締めたその瞬間。




流れ弾が当たって途中で止まったシャッターから、何者かが飛び出してきた。


長い黒髪を冬風に流す影がひとつ。




壱華だった。
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