闇色のシンデレラ
タイヤがアスファルトをこする、嫌な音を奏でながら車は俺の目の前で止まった。


窓にスモークがかかっているため向こう側が見えない。


新手の敵か?今度はなんだ。


邪魔な車を警戒し睨みつけていると、銃声がまたひとつ。





「……いやぁぁーっ!」



それから、壱華の叫び声。





「壱華っ!」



血の気が引いた。無我夢中で駆け出した。


だが、黒づくめの車のドアが開いたのはちょうどそのとき。


愛しい女のもとへ駆けつけようと、注意を怠ったその一瞬の出来事。


俺は後ろからの気配にまるで気がつけなかった。


車から降りたひとりの男が銃を構える。


銃口は俺に向けられていた。




───バンッ





静かな冬の空の下で放たれた銃弾は、俺の右脚に着弾した。
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