闇色のシンデレラ
二度の負傷を重ねても、俺は壱華を奪還するとこしか考えていなかった。


そんなときに限って、こいつは俺の目の前に現れた。



突如、ザッと足音を立て俺の前に立ちふさがった何か。


見上げると、ひとりの男にゆく道をふさがれていた。


見たところ、俺はこいつに撃たれたのだと判断した。


男の体からかすかに火薬の臭いがしたからだ。




「申し訳ございません。あなたを足止めするにはこうするしかありませんでした」




その声はどこかで聞いたことのあるものだった。


しかし逆光で顔が判別できない。



「あなたは東の狼。首だけでも獲物に食らいつくという話を聞きまして。
ご安心ください、命にかかわるほどの重傷ではないはずです」



すると男は俺の手から落ちた拳銃を拾い上げ、俺を上から見下ろした。


奴が前かがみになったとき、認識できたその顔は——




「てめえ……」

「おや、この顔に見覚えがありますか?」



無表情で自分の顔を指さすそいつは、確かに顔見知りであった。


そしてそれは、最近梟から仕入れた情報を裏付ける確かな証拠になる人物だった。



「サツが……何を目的で壱華を攫う!今すぐ解放しろ!」



奴はマル暴として荒瀬組に出入りする、警察だった。
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