闇色のシンデレラ
「来ないで、やだ……ケホッ」



けれど彼はびくともしないし、無理に叫んだせいで声が出ない。


4日も動かず唸ることしかできなかった身体だ。


いきなり暴れたら調子が狂うのは当たり前。



「うぅ、ゲホッ、コホッ……」



わたしは激しくむせた。



「落ち着け、水でも飲むか」



そんなわたしに、荒瀬さんはベッドテーブルに手を伸ばして、水の入ったグラスを手にした。


そのまま渡してくれるのかと思いきや、彼は空いている手で腰を引き寄せて顔を近づけてきた。


陶器のような綺麗な肌を直視できなくて視線を逸らしたけど「こっち向け」と頬に手を添えられる。


あれ、なんだこのシチュエーション。



「や、やだ!」

「は?何嫌がってんだ。これまで口移しで水飲ませてやってたのに」




とりあえず否定したら、とんでもない言葉に耳を疑った。


口移し?


……じゃあ、夢の中で唇に触れたあの感触は、この人の唇だったってこと?


あの不思議な感覚は、夢じゃなかったの?
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