闇色のシンデレラ
「安心せえ、ちゃんと生きてるで。
無傷じゃあないけど。まああいつのことや、3日で治すやろ」
あっけらかんとした顔でそう告げられ、嘘ではなさそうだとほっと肩をなでおろした。
よかった。志勇は無事なんだ。
「3日ではさすがの帝王も無理かと思いますが……」
と、油断していたそのとき、頭の上から声が聞こえた。
勢いよく振り返ると、ひとりの男性がわたしの背後に気配なく立っていた。
「……落ち着いてください。
ここにはあなたに危害を加えようとする者はいない」
見返ると、30代半ばと見られる、スーツを着た背の高い男性がいた。
深く渋い声の男性は、わたしを見下ろして無表情のまま口だけ動かしていた。
「初めまして、相川壱華様。私は赤星と申します」
彼は左側に正座し、無駄のない所作で挨拶をしてきた。
そして顔を上げ、落ち着き払って淡々と暴露した。
「最初に白状しておきますが、私が荒瀬志勇を撃った人間です。
私があなたの大事な男を傷つけた犯人です」
「っ!?あなたが、志勇を……」
「ご安心ください。急所は外しました。1ヶ月もすればあの方も動けるようになるかと」
「そんな……」
怒り狂う気力はなかった。ただ暗闇に戻された心境だった。
「なんや、いきなり堅苦しい挨拶しよって。
まだ俺が壱華と話よる最中やねん。
それにそんな早う核心に迫らんでもええやろ」
すると右に座る関西弁の男はいじけたように文句を飛ばす。
そっちを見ると唇を尖らす彼と目が合った。