闇色のシンデレラ
彼の顔をじっと見ていると、視界で何かが動いた。


顔を上げると壁にかけられた振り子時計が揺れている。


夢の中で永遠と響いていたのはこの時計の秒針か……。



「……統帥(とうすい)を差し置いて自負するとは、恥ずかしくないのですか」

「うっさいわ!カッコつけたってええやろ。
自分、東京に住んでたからって、大阪の人間馬鹿にするくせついてるんとちゃうか?」

「馬鹿にはしていません。指摘したまでです」

「あっそ。せやな、お前はそういう奴やったわ」



ところで、わたしの存在はさて置き、コントのような口論を繰り広げる彼ら。



「あなたが『覇王』?」

「まあ、一部ではそう呼ばれてるらしいな」



その間に割って入ると、望月はいたってすました顔でうなずいた。



「いまさら、わたしを攫って何がしたいの?」



更に質問を繰り出す。


すると彼は面食らったような顔をして、浅いため息をひとつした。









「攫ったも何も……お前は元々、西雲の人間やで?」









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