闇色のシンデレラ
はっと気がつくと、わたしの体は震えていた。

これは何に対しての震えだろうか。



「……ほんまに、何も知らんで生きてきたんか」



志勇を失いかけたことによる恐れか。



「叔父に、荒瀬志勇に、ずっと守られて生きてきたんやな」



それともこれから訪れる、未知なる秘密を恐れているのか。




「何の、話?」

「お前の生い立ちについてや」






どちらにしろ、シンデレラにかけられた魔法が解ける時間は、もうすぐそこに差し迫っていた。



「話せば長くなる。結論から言おうか」



ずっと隠してきた。知らなければいいと思っていた。



「いや、言わないで、聞きたくなんかない」

「いいや、聞いてもらおう。この話を知らないわけにはいかんのや」

「やめて。何もしゃべらないで」

「お前は……」

「やめてっ!」



声を荒らげた。


だけどもう、無駄だった。


覇王はその瞳にわたしを捉えた。嘘という幸せに逃げようとしたわたしは、真実を語ろうとする彼から目が逸らせなかった。


カチ、カチ、耳に残るような時計の秒針の音が室内に響く。





魔法が解けた先。


シンデレラに残されるのは辛い現実と幸せの余韻だけ。


だから闇色のシンデレラは恐れた。


真実の先に待ち受けているのは、わたしという人間を大きく変えてしまうものだと、心のどこかで判っていたから。
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