闇色のシンデレラ

「……ご名答。身元不明の孤児に入れ込むほどの価値がどこにあるのかと、残された家族は疑問を抱えていた」



覇王はわたしをちらりと見ると、感心したかのように口角を上げた。



「けど、探れど探れど真相には近づけん。当たり前や。
あの男は完璧にお前の存在を隠したんやからな」



白い歯を出して笑う彼から、虎を思わせる牙のような犬歯が合間見えた。



「ところが、12年が過ぎてその疑問を気にしなくなった頃や。
相川美花が警察官の男に手を出したことで、壱華の出生の秘密を暴いた。
そして不運にも、同時期に警察は極山と、極秘に提携した」



わたしの身元が判明した頃、警察と極山が禁断の関係を結んだ。


……悪夢はそこから始まったんだ。



「せやからお前は、極山や警察に狙われる羽目になった。
統帥の血を引く、望月の末裔。
衰弱した西を叩くには、幾分か利用価値があるかもしれへんと」



だけど。



「そんなときや。あの男が、帝王は、運のいいことに壱華を手に入れた」



あの日、あの時、わたしが警察や黒帝に追われていなければ、志勇と出会っていなかったのかもしれない。
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