闇色のシンデレラ
「誰もが仰天した。無関係の荒瀬が抜けがけに介入してくるとは、想像もつかんかった」


望月はため息混じりにそう言うと、腕を組んでもう一度ため息をついた。



「志勇は、わたしを助けてくれた。居場所を与えてくれた」



しかし、わたしが呟くとあっけらかんとした表情は一転。

腕を組んだまま、冷ややかな軽蔑の視線とともに目を細めた。



「何を言うてるんや、あいつがそんなお人好しに見えるか?」

「……」

「お前は偶然を装って拾われただけ。荒瀬組はお前を利用する気やった。
本来の目的はお前を使って西を潰すことに決まってるやろ」



この男、若頭としてかなりの発言権があるのだろう。さっきから自分のペースで好き放題言ってくる。


挑発的で他人の意見を一向に聞こうとしなくて、腹が立ってきた。



「そんなの、全部知ってる」



この人、何言ってるんだろう。


志勇がわたしをどう思っていようと、わたしの心は変わらないのに。


そう思うと彼が愚かに見えてきて、笑いがこみ上げた。



「……っ」



すると望月はぎょっとした顔をして言葉を止めた。わたしはその一瞬の隙を突いた。



「……それでもいい」



思ってもない反応だったのか、意表をつかれ、目を丸くする覇王。



「わたしは、あなたの手は取らない。
わたしにとっての存在意義は志勇。志勇さえいれば他に何もいらない。
あの人無しの世界なんて生きる価値がない」




人は、わたしを狂っているというだろうか。


なんとでも言えばいい。


志勇がわたしにとってのすべてなのだから。
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