闇色のシンデレラ
俺がそういうと、壱華は明らかに顔を強ばらせた。


しかしその後、ベッド横のパイプ椅子に座って、俺から離れようとする素振りは見せない。


俺は手元にあったリモコンを操作してリクライニングベッドの背中の部分を起こした。



「なあ、あいつは死んだのか?」

「あいつ?」

「壱華を撃とうとした男。白い髪の……」



夢の中に出てきたあいつを思い浮かべて、壱華に問いかけた。



「あの男は死にました」



ところがその問いに前へ出て答えたのは、壱華をここまで連れてきた、スーツ姿の無表情の男。



「赤星……」

「実質、警察が利用するために捕まえた3人です。
釈放された後、極山の連中に銃の扱いを教えられたようです。
奇襲前にシャブ中にされまして……どちらにしろ助かりませんでした」



説明を受け、言葉を失った。


薬物中毒にされていたから、だからあんなにも簡単に人の命が奪えたというのか?


ふつふつとした怒りが胸中を駆け巡り、俺は拳を強く握った。



「……ひどい」



冷静な壱華も、目を伏せ口を固く結んでいる。


そうだ。なんにしても、壱華が傷つけられないでよかった。



「あれはリーダー狩りで捕まった、『ファントム』のヘッドたちなんだ」




どこか一安心して、ぽつりと声を漏らした。



「黒帝の傘下だったが、逮捕されてから消息が分からなくなった。
俺はそのとき自分のことで精一杯で、あいつらを捜してやれなかった。
もっとちゃんと調べていれば……何か変わったかもしれねえ」



壱華は、それをまっすぐな眼差しで聞いていた。


以前と変わらない真摯な姿勢で。



「3人とも、俺が殺したようなもんだ」



なぜ、そんな目で俺を見る?


あんなひどいことをしたってのに、(さげす)んでくれないと、俺の立場がねえだろ。



「いっそ俺が死ねばよかったかもな」



そう考えると、投げやりな言葉を放っていた。
< 361 / 409 >

この作品をシェア

pagetop