闇色のシンデレラ
それから壱華は、毎日のように病院を訪れた。



「理叶、来たよ」


毎日、花を1輪持ってきて。


「理叶、今日は寒いね」


花瓶に1本ずつ差していって。


「ねえ理叶、明日は雪が降るんだって」


愚かな俺に恋情を募らせていく。





「ねえほら、雪が降ってる」



花瓶に差す花が、10本を超えたころ。


今日も壱華は寒い中病院を訪れた。


窓の外をちらほら舞い落ちる雪の結晶を見て、いつもと同じ場所に座っている。


その日はなぜか、部屋にふたりきりだった。



「……壱華」

「なに?」

「話を聞いてほしい」



そんな風もない静かな日、俺は壱華に許しを乞う。



「言い訳にしか聞こえねえかもしれないが、どうか聞いてほしい」

「……どうぞ」




そうして、外に踊る真っ白な雪に向けて吐き出す罪の欠片。


俺は生涯、この日を忘れることはなかった。
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