闇色のシンデレラ
SIDE 壱華



これは非常に恥ずかしい。


志勇はわたしをあぐらをかいた脚の上に乗せ、ドンと鎮座している。


ねえ、ちゃんとTPOを考えようよ。




「皆様、おそろいですね。
それでは、臨時総会を開会いたします」




そっと服を引っ張ったり、目配せして志勇に訴えようとしたにも関わらず、この体勢のまま、会合は開かれてしまった。


司水さんの張り詰めた声が渡る。




「始めにですが、ここに招集された理由は各々(おのおの)分かっていらっしゃるはず。
ですからまずは、来客のご紹介から参りましょう。
大阪からおいでの、九代目西雲会、若頭の望月様でございます」



司水さんが手のひらで望月を指し示すと、彼は両手をを畳につけて一礼した。




「お初にお目にかかります。荒瀬組組長殿、若頭殿、そして、荒瀬組を代表する重鎮の皆々様。
本日は総会にこのような若輩者をお呼びだていただき、恐縮の心持ちです。
ただいまご紹介に預かりました。西雲会若頭、望月大希でございます」



聴く者、見る者に畏怖を植え付ける、虎の静かな咆哮(ほうこう)


単に挨拶をしただけなのに、彼の風格や力量は、荒瀬の列強たちの舌を巻かせた。



「では、今回の件に関して私から、詳細をご説明させていただきます」



続いて司水さんが報告を始めると、そのうちにひとつ、ふたつと噂をする声が聞こえ、そして充満していった。





「ならば、あの娘にもはや利用価値はないのでは?」

「潮崎に牙を剥いておいて、お咎め無しではなかろう」

「して、その潮崎の息子はどうなったんだ」

「……若はこの件、どうするかのう」




厳しい意見が飛び交う。わたしなんて必要ないと目の前で言われ、ひどく落ち込んだ。




「それで、お前はどの面下げてここに来た」



そんな空気をモロともせず、志勇はわたしを抱きしめ、やがて冷徹な視線で虎に質問した。
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