闇色のシンデレラ
ざわり、豹変した覇王に広間がささめいた。




「ほな、端的に言わせてもらいましょか。
相川壱華を手元に置きたいなら、交換条件として今後一切西雲に手出ししないと誓約してもらいたい」



要点となる部分をトーンを落として腹を割った虎。


辺りのささめきは、どよめきに変わった。



「あんたが胸に抱いてるその女は、元はといえば前任の西雲会会長の孫娘に当たる人間や。
そんな大事な存在を、荒瀬においそれとは渡せん」



その喧騒に負けじと声を張る望月。

狂人のような不気味な笑みで主張し、飛び交うヤジを相手にもしない。



「西を潰そうと思わんかったらええ話。できないことはないやろ」



背後で怒り狂う任侠たちに、むしろ愉しそうに笑いかけていた。



「何をいまさら!?」

「奇襲をかけてきたてめぇらが何を抜かす!」

「ましてや若頭を撃った組だ!信じられるか!」



……ああ、こんなたくさんの怒鳴り声は嫌いだ。気分が悪い。


たまらず耳を塞いだ。



「……壱華?」



それでも覇王は、わざと周りに聞こえる音量で荒瀬組を揺さぶる。



「せやせや、ちなみに若頭を撃った人間はこいつなんやけど、処分はどうする?」



後ろに控える赤星を指すと、広間の怒りは爆発した。
< 383 / 409 >

この作品をシェア

pagetop