闇色のシンデレラ
SIDE 志勇




「俺は始め、お前を計画の駒に使うつもりでいた」



告白すると壱華の大きな瞳が揺れる。




「極山がお前を盾に西雲を脅して最終的に潰すつもりなら、荒瀬はお前を飼い慣らし、西に送り込んで内側から崩壊させていく目論見だった」



その瞳の奥で、何を思うのか。


良きにつけ悪しきにつけ、全てさらけ出すつもりでいた。




「だからお前に優しくした。
元より酷い扱いを受けていたから、すぐに俺に懐くと思った」

「……でも、わたしは完全に心を閉ざしていた」



壱華はどこか遠くを見つめている。



「ああ、1ヶ月経ってもお前は俺を視界に入れようともしないで……」

「ふふっ、大変だったね」

「それがムカついたんだ。尚更オトしてやろうと燃えた」



しかし壱華は視線を俺に移すと、ゆっくり微笑んだ。


なんだ、笑えなくなったなんて言った割に、ちゃんと笑えるじゃねえか。



「どうしたらいいかとひとりの女のために悩んで、お前を喜ばせようと試行錯誤するうち……」



それとも俺の前だから笑えるのか、と自惚れるが、それはそれでいい気がしてきた。



「不覚にも、お前のそばにいて笑い合うことが、俺にとっての至上の歓びになっていた」



どんな形であれ、お前がここにいるという事実が俺に生きる力を与えるのだから。
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