闇色のシンデレラ
すかさず、背中と膝裏に手を回して持ち上げる。

すっかり軽くなってしまった壱華をベッドに運んだ。

特に抵抗しない壱華をそっと下ろして、俺はシャツを脱いでからベッドの端にすわった。


ところが振り返ると、壱華は眉を下げて泣きそうな顔をしている。



「なんだ?」

「傷、見せて」



目線は俺の肩にあり、小さな声で囁くと膝で歩いてこちらに寄ってくる。


それに合わせ壱華と正面合わせの形をとって、脚の間に迎え入れるように腰を抱いた。



「……痛い?」



するとぺたんと正座して目線を合わせ、不思議そうに肩の傷を見る壱華。



「いや、もう痛くねえ」


俺がそう言うと壱華は首元に顔をうずめた。そして。



ちゅ


「ごめんね、綺麗な身体に傷つけて。
それからありがとう。わたしを想い続けていてくれて」



傷跡にキスをして、謝罪と感謝を続けざまに述べると、顔を上げて俺の目を見つめた。


白い頬は、たった今流れ出た涙で濡れている。


美しい泣き顔に、内なる獣が猛った。
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