闇色のシンデレラ

魔法が解けたその先に

チュンチュンと、寒空の下で2羽のスズメが遊んでいる。


平和だなと窓の外を見上げながら、わたしは待っていた。



「壱華、ただいま」



黒い(つや)をまとう美しき帝王。


わたしだけのあたたかい闇を。



「あ、おかえりなさい。早かったね」




小走りで寄ると、彼は手に提げていた紙袋を私の前に差し出した。



「ん、新しいスマホ」

「え?ありがとう、また買ってきてくれたの?」

「ああ、もう紛失すんじゃねえぞ」

「うん。志勇も、もう時計壊しちゃだめよ?」



同意を求めるように首をかしげると、彼は薄く笑ってわたしの頭を撫でる。


腕につけた時計が日差しを反射して光った。


12時で指して止まったという時計は、今では新たな時を刻んでいる。




「それより寒いだろ、こんなところにいたら」

「今日は割とあったかい方だよ。
それに志勇を待ってたから寒さなんてへっちゃら」

「馬鹿、風邪ひいたら元も子もねえだろ。さっさと中入るぞ」



口は悪いけど嬉しそうな志勇は、腰に手を回して部屋までエスコート。


志勇が帰ってくるからと、あたたかくしておいたリビングにわたしを引き入れた。
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