闇色のシンデレラ
今まで思い出せなかった彼の正体。


荒瀬志勇。


彼は、日本三大暴力団のひとつ、荒瀬組の───若頭。


この街を中心に、関東地方を統べる闇の帝王。



「お前、1週間ずっと点滴で生きてたんだぞ」

「……」

「いい加減食えよ。つきっきりで介護してきた俺の身になれ」



そんな人がわたしを『介護』する姿はあまりにも滑稽(こっけい)で。


これが本当に噂に聞く帝王なの?



「ほら、何も入ってねえよ。食べろ」



不審がるわたしに、彼は安全だと示すためにお粥をひと口。


それから綺麗に、そして妖艶に微笑み───




「……食わねえなら、どうしてやろうかなぁ」




色気のある声で、意味ありげな一言を放った。
< 43 / 409 >

この作品をシェア

pagetop