闇色のシンデレラ
書店で遠慮なく10冊ほどの参考書を購入し、キッチン用品を扱うお店で調理器具を揃えて、それらを3人いる護衛の人に渡した。


自分の物なのに持ってもらうのは申し訳ないけど、それどころじゃなかった。


あらゆる所で、様々な視線を感じたから。


歩みを進める度、人の前に出る度「帝王」「荒瀬組」「若頭」そんな単語が飛び交う。


その注目はわたしも例外ではなかった。



「ねえ、あれって……」

「あり得ない、あの女が?」



特に嫉妬の目をした女たちは、目くじらを立ててわたしを観察する。


そして彼女たちは、そろってこの言葉を口にする。



「『帝王の妃』……?」


「本当にいたの?」

「嘘でしょ?荒瀬志勇に女がいるなんて、ただの噂じゃなかったの!?」

「絶対嘘!だいたい、あんな女じゃ釣り合わない!」



こっちにガンガン聞こえる音量でまくし立てる女の声。


何のことかさっぱりだけど、ごもっともな意見だと思う。


なんの価値もない小娘が帝王の隣にいるなんて不釣り合い。


シンデレラになれないことくらい、わたしが一番分かってる。
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