闇色のシンデレラ
SIDE 壱華


「ねえ、志勇」



最近、やっと名前で呼べるようになった彼と、食料品売り場で今夜の夕飯の材料を調達中。


実は今日、初めて志勇に手料理を振る舞う。


この1ヶ月の間ずっとお世話してくれたから、お礼の意味も込めて作ることにした。



「何食べたい?」

「……肉」



そう言われて目に止まったのは、特売の豚肉。



「んー、生姜焼きとかどう?」

「いいな、じゃあ豚か」



志勇が賛同してメインディッシュが決定し、豚肉を剛さんが押してくれているカートの中に入れる。


生姜焼きといえば、キャベツの千切りが必須。レタスとトマトを添えてもいいかも。


一汁三菜にしたいからみそ汁と、きんぴらごぼうと、あとさっぱりして簡単なものがいいから、冷奴にしよう。



「家にドレッシングなかったよね」

「ああ」

「みりんは?」

「みりん……?酒ならある。お前を酔わすための」

「……わたし未成年なんですけど」

「いいだろ少しくらい。帰ったら呑もうぜ?」



頭の中で色々と考え事をしながらも、ずっと喋り続けてるわたしたち。


(はた)から見たらなんてことない会話でも、ちゃんと返してくれる人がいるって嬉しい。



「酔い潰れたらちゃんと介抱してやっから。ベットの上で」

「はいはい、まず飲まないから」



たまに挟んでくる変態発言をかわすのが面倒だけどね。
< 83 / 409 >

この作品をシェア

pagetop