闇色のシンデレラ
「今日護衛についてくれた人って3人だっけ?」



我ながらうまくかわして話題を逸らす。


ちなみに手に持っているのは缶コーヒー。


これを護衛の人に差し入れようと思う。



「……おい、まさかそれをやるつもりじゃねえだろうな」



察した志勇はむくれてしまったけど、わたしは返事せず缶コーヒーを3つカゴの中へ。



「たかが護衛に差し入れなんていらねえよ。戻せ」

「やだ、わたしがあげたいから買うの。わざわざ来てくれたんだから」



やっぱり反論してきた志勇の気迫負けないように、キッと彼を見つめて異を唱える。


確かに彼が育ってきた環境上、護衛がいるのは当たり前かもしれない。


でも、護衛だって人間なんだから感謝をするのも当たり前。


そんなとき、正面から颯馬さんが戻ってきたのが目に映った。



「あ、ほら、颯馬さん帰って来たから行こう」

「……」

「志勇?」



振り返って誘っても、志勇は眉間にシワを寄せるばかり。


だからそっと服の裾を引っ張って、首を傾げた。



「……早く帰っていっしょにご飯食べよう?」



その仕草は狙ってるとかじゃなくて、本心だった。


気にしないつもりでいた人々の視線が、無数のトゲとなってわたしの心を傷つけて、耐えられそうにないから。



「仕方ねえな……」



嫌々承知してくれた志勇は、さっきみたいに腰に腕を回して、わたしに歩くよう促す。



「マジかよ兄貴……」

「若が折れた……」



簡単に『折れた』帝王に、呆然と側近たちが見ていたことを、わたしは知らない。
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