闇色のシンデレラ
会計を済ませて、その足で帰ることになったから、缶コーヒーを力さん含め3人に渡した。


背後で志勇が威嚇していたせいか、なかなか受け取ってくれなかったけど、渡せたから満足。


そして現在車の中。ボンネットのへこみもサイドミラーの破損も綺麗に直ってる、例のタクシー型のクラウン。


運転は剛さんで、助手席には颯馬さん。


そして後部座席は、広いはずなのに志勇に抱き寄せられて座ってるから息苦しい。



「志勇……」

「ん?」

「いっこ、聞いていい?」

「なんだ」



BGMのかかっていない車内は空気が重たすぎて、それを紛らわすために、密着している志勇に話しかけた。




「帝王の妃って、何?」



それは先ほどから疑問に思っていたこと。



「ああ、ちゃんと広まってたな」

「志勇が広めたの?」

「いいや、この街には『(ふくろう)』と呼ばれる情報屋がいてな。
そいつにお前の噂を拡散するよう頼んだ」

「どうして?」

「お前は俺の女だから。それ意外に何の理由がある?」

「え……」



問うと、即座にあり得ないセリフを、当然のごとく言ってのけた志勇。


信じられなくて、純粋な黒の瞳に吸い込まれそうで、そして色気にノックアウトしてしまいそうで───



「つ、剛さん!今日何かご予定あります?」



突然、運転中の剛さんに話しかけた。


そうだ、言いたいことがあったからちょうどいい。
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