闇色のシンデレラ
「はいっ、俺っすか!?ないっす」

「あ、颯馬さんも」

「右に同じく。何かご用ですか」



用事がないのならよかった。


そしたら、彼らにも今日のお礼ができる。




「あの、良かったら、今晩、いっしょにどうですか?」


「え?」

「は?」

「あ?ふざけんな、来んな」



2人がこんな反応をするのは想像してたけど、提案した瞬間却下する志勇は何なのかしら。



「お肉いっぱい買ったからいいでしょ。
だいたい、あれだけ買ったらすぐに消費できません」

「知るか。お前の手料理を食っていいのは俺だけだ」



誰が決めたんだそんなこと。



「俺以外の男に色目使ってんじゃねえ」

「はあ?わたしは、いつもお世話になりっぱなしだから、せめて自分のできることはしたいだけです!」

「さっきも護衛にコーヒーなんか配りやがって……このお人好しバカが」



お人好しバカ!?



「ぶっ……」



変なレッテルを貼られて開いた口が塞がらないでいると、なんと、颯馬さんが吹いた。



「あ、すみません。どうぞ続けてください」

「はあ……」



志勇に散々言われて、颯馬さんには笑われて、けれど嫌な気がしないのはなんでだろう。


不思議な感情に揺られながら、車はマンションに到着してしまうのだった。
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