闇色のシンデレラ
思わずツッコんでしまったけど、とりあえずおかわりと言われたのでご飯を追加。



「お前、それだけでいいのか」



すると志勇はわたしのご飯のこじんまりした量を見て一言。



「食わなきゃ胸に栄養がいかないだろうが」

「……しょ、食事中にそんなこと言わないで」

「重要なことだ。いい感じに太るまで俺は抱かねえからな」



……抱く?何言ってんのこの人。


食事中に、人前で、言うセリフじゃないでしょうが!



「っ、そんなデリカシーのない人とは、口利かない!」

「はあ?嫌だ」

「嫌だじゃないし。誰これ構わず人の前で恥ずかしいこと暴露しないで。
颯馬さんも剛さんも迷惑してるでしょ」

「こいつらは関係ねえ。俺はお前に話しかけてんだ」

「他人に聞こえてるなら意味ないじゃん!もう、乙女心に無神経な人は嫌い!」

「壱華……」



こんなに思ってることを口にしたの久しぶり。


他人にここまで感情を(あら)わにしたのは、叔父さんが亡くなって以来のことかも。




「ぶはっ」



ガーンと効果音がつきそうなくらいダメージを受けた帝王を見て、ふき出したのは颯馬さん。



「ははは、もう、無理……」



(こら)えきれないといった様子で口元を押さえている。



「くくっ……兄貴が、言い負かされてる……!」



いつもの冷静さと打って変わって、愉快げに笑う彼。


それは颯馬さんがわたしに初めて見せた、作り笑いではない満面の笑みだった。
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