闇色のシンデレラ

こういうときってどうしたらいいんだろう。


こんなに優しく───愛されているような触り方はされたことないから、どんな反応が正解か分からない。


小鳥がついばむような、優しい口づけを繰り返す志勇。


唇を放す度、小さな音が響いて頭がクラクラする。


優しさが伝わって、重ねる唇が熱を帯びて、心臓が激しく脈を打って苦しい。



……わたしはこの人のために、何ができるだろう。


薄く目を開いて、彼の閉じられた目元を観察しながら一考した。



思えばわたしは、いつも逃げてばかりだった。


誰と付き合うにしても、自分から線を引いて、なるべく深く関わらないようにしていた。


今まで全部他人のせいにしていたけれど、わたしの方にも非があったのかも。



だからまずは、逃げないことから始めようと思う。


裏切りは怖いけど、自分の気持ちを伝えられず、逃げるだけのわたしは嫌だ。


これからは志勇の求めることには、なるべく答えてあげたい。




「……なあ」

「ん?」

「押し倒していいか」

「……実行したら、今度こそ口利かない」



限度もあるけど。
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