闇色のシンデレラ
「ったく、まさに帝王ね。あたしの話なんか聞きやしない」



志勇の背中が見えなくなるまで立っていたら視線の隅に映ったのは腕を組む彼女。


……志勇とどういう関係なんだろう。


なんて、彼女でもないのに考えるわたしはやっぱり馬鹿だ。




「あなたがシンデレラ、ね?」



そのとき、彼女がわたしと向き合った。


反射的に、侮蔑(ぶべつ)の目を向けられるんじゃないかと思って怖くなったけど、近くで見た彼女の目は輝いていて、濁ったものは感じられない。


それよりも、その瞳には温かみと優しさがこもっていて、単純なわたしは彼女をいい人だと判断した。



「初めまして、相川壱華です」

「こちらこそ初めまして、あたしは(りょう)よ。
やっと会えて嬉しいわ、あなたにずっと会いたいと思っていたから」



そこで頭を下げたところ、意味深な言葉に首をもたげる。


しかし、涼さんの弾けるような笑顔に魅了され、それ以上深い意味は考えなかった。


立って話もなんだからと、シャンプーをしてもらうことになり、その間他愛のない話をした。


話をして感じた彼女の印象は、すこぶる明るくて、裏表のない人だった。
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