自動車学校殺人事件〜バカなアイツは名探偵〜
今まで、旬は美竜の担当になったことはない。しかし他の教官からの話は、実に恐ろしいものだった。

「まさかカーブで五十キロのスピードのまま曲がろうとするとは……」

「逆走しそうになったわ!」

「ポールにぶつかるところだったよ」

過去に聞いた話を思い出し、旬は運転の時間が来てほしくないと初めて思った。体調不良にならないかなと思ったが、旬の体には寒気一つ感じない。

「太宰さ〜ん!元気ないですね〜。何かあったんですか〜?」

語尾にハートマークがつきそうな甘ったるい声で、旬に誰かが声をかける。そしてギュッと抱きついてきた。

「……ッ!やめてください!」

旬に抱きついてきたのは、ロングヘアーの厚化粧の女性だった。旬と同じく教官である伊坂珠美(いさかたまみ)だ。旬は真っ青な顔になり、珠美を離す。

「ええ〜……。珠美、傷ついちゃう〜。太宰さんは珠美の恋人なのに〜……」

「勝手に決めないでください!!」
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