明日の世界がきみの笑顔で溢れるように。
好き…………キモチが溢れ出してくる。好きっていうキモチはまったくかわらなくて。

かわらないどころかもっともっと好きが大きくなって、すきが大きく膨らんでいつか弾けてしまいそうだった。




病気が進むにつれて、同じことを何回も聞かれることが増えて、忘れているはずなのにきみはいつも不安そうだった。



『今日何日だっけ?』
『10日だよ』

『俺の家どこだっけ?』
『ここだよ』

『ドアが開かない』
『それ引くんじゃなくて押すんだよ』





『アルツハイマーは進行が早いです。すぐに寝たきりなると思われます、まわりの人の顔も忘れてしまうでしょう』


立ちくらみがして、頭がガンガンして、胸が痛く、苦しくなって、無力な自分が憎くて、こわくて、一番苦しいのは私じゃないのに、私がいつも弱くなってしまって。

落ちそうな涙を堪えて口角を無理矢理上げることしかできない自分が情けなくて。




あれは一週間前のこと。

涙を拭って、口角をグイッて上げて、気持ちを切り替えて、きみの部屋に向かった。
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